(イノベーション)



経営革新とは               (静岡県庁 経営革新制度のページ) 

        静岡県の経営革新





イノベーションとは

 イノベーションなる言葉は技術用語ではない経済用語であり社会用語である。イノベーションをイノベーションたらしめるものは,科学や技術そのものではない。経済や社会にもたらす変化である。消費者、生産者、市民、学生その他の人間行動にもたらす変化である。イノベーションが生み出すものは、単なる知識ではなく、新たな価値、富、行動である。




 イノベーションとは、組織の中ではなく組織の外にもたらす変化である。イノベーションの尺度は、外の世界への影響である。したがってイノベーションは、常に
市場に焦点を合わせなければならない。




 イノベーションの戦略もまた
「我々の事業は何か。何であるべきか」との問いから始まる。しかしながら、イノベーションの戦略においては、未来についての仮定は、既存事業の戦略の場合とは基本的に異なる。既存事業の戦略では、現在の製品、サービス、市場、流通チャネル、技術、工程は継続するものと仮定する。これに対しイノベーションの戦略は、既存のものはすべて陳腐化すると仮定する。したがって既存事業についての戦略の指針が、よりよくより多くのものであるとすれば、イノベーションについての戦略の指針は、より新しくより違ったものでなければならない。




 イノベーションの戦略の第一歩は、古いもの死につつあるもの陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う
組織は昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために開放できる。




 イノベーションの戦略において次に重要なことは、目標を高く設定することである。改善の仕事すなわち新製品の追加、製品ラインの高度化、市場の拡大などは、50%の成功率を期待できる。完全な失敗は半分以下であろう。これに対してイノベーションの成功率はせいぜい10%である。しかるがゆえにイノベーションの目標は高く設定しなければならない。1つの成功が9つの失敗の埋め合わせをしなければならない。




 イノベーションには、既存事業のための尺度、予算、支出とは別のものが必要になる。
既存事業のための予算とイノベーションのための予算は、別途に、しかも別の観点から編成しなければならない。既存事業について発すべき問いは、「この活動は必要か。なくてもすむか」であり答えが『必要である」ならば、次に発すべき問いは「必要最小限の支援はどれだけか」である。




 イノベーションについて発すべき第一の問い、しかも最も重要な問いは、「これは正しい機会か」である。答えが「しかり」であるならば、第二の問いは、「この段階において注ぎこむことのできる最大限の優れた人材と資源はどれだけあるか」である。重要なことは、期待するものを検討し、書き表しておくことである。イノベーションが製品、工程、事業を生み出したとき、それらの期待と比較することである。
結果が期待をかなり下回っているのであれば人材と資金をそれ以上注ぎこむべきでない。




 イノベーションのための活動に関して発すべき第三の問いは、
『手を引くべきか。どのように手を引くか」である。




 イノベーションを行うには、組織全体に継続学習の風土が不可欠である。イノベーションを行う組織では、継続学習の空気を生み出し、それを維持している。ゴールに達したと考えることは誰にも許されない。学習が継続すべきプロセスとなっている。変化への抵抗の奥底にあるものは無知である。未知への不安である。しかし
変化は機会とみなすべきものである。変化を機会として捉えたとき、はじめて不安は消える。




 イノベーションのための
探求は、既存事業の管理とは切り離して組織しなければならない。新しいものを創造する取り組みと既存のものの面倒を見ることは、同時には行えない。いずれも必要であるが、別種の問題である。イノベーションのための仕事は、独立した部門に任せなければならない。




 イノベーションのためのチームは、既存事業のための組織の外に独立して作らなければならない。伝統的な意味での分権化した事業とまではいかなくとも、既存事業のための組織からは独立させなければならない。
変化ではなく沈滞に対して抵抗する組織をつくることこそ、マネジメントにとって最大の課題である。それは可能である。実例も多い。だが、いかにしてこの種の組織を当然の存在とするか、いかにしてこの種の組織を、社会、経済、個人にとって生産的な存在とするかは、これからの課題である。あらゆる兆しから見て、来るべき時代はイノベーションの時代だからである。



 

           
P.f.ドラッカー